６月25日（金）
ここ数日、イラクで殺害されたキム・ソンイル（金鮮一）さんの事件をめぐって様々な議論が起こっています。拉致の事実を掴んでいなかった韓国政府への批判、朝刊一面に「生存」の誤報を出してしまったマスコミの謝罪、故人の冥福を祈りつつイラク派兵に反対する市民集会の是非。これらは、アメリカに同調してイラクへ韓国軍を派兵する国家の決定に対する疑問を基調としながら、今回の事件における韓国政府の対応の拙さを批判しているわけで、このような議論を見ていると、同じような事件が日本で起きても全く不思議はないように思えます。幸いにして日本人の人質はこれまで全員無事に解放されていますが、それは運が良かったという要因も大きいような気がするのです。
また、そのような政治的な議論とは全く別の次元で議論を呼んでいる問題があります。ネット上にキム・ソンイルさんの殺害場面の動画が流布されているという、極めて現代的かつ社会的な問題です。アメリカのサイトで公開された動画が韓国内でもダウンロードされて急速に拡散したため、情報通信部と警察庁は動画をアップしているサイトへのアクセスを遮断、さらには関連語句の検索結果へのアクセスまで制限する措置を取るに至っています。これは一種の情報管制なわけで、決して望ましいことではないと思うのですが、現状ではやむをえないのでしょう。この国家レベルでの情報規制と連動するように、大半の良心的なネチズン（「ネット市民」の意味）の間ではこの動画の流布を阻止しようという機運が生まれ、ネット上の当該動画に関する申告が相次いでいるそうです。
ネット上の情報規制という点では、韓国は元々厳しいお国柄です。先日、ちょっと探したい情報があって、Daum や NAVER など韓国の代表的な検索サイトで「コンドーム」を検索したのですが、検索結果が出る前に、19歳未満でないことを証明する本人確認（ポータルサイトへの登録ＩＤとパスワードの入力）を求める画面が出てきました。子供が興味本位で検索しても、アダルトサイトにはアクセスできないような仕組みになっているのですね。実際には、20歳以上の人のＩＤを借りてしまえば先へ進めますし、そもそも google や yahoo などを利用すれば何の障害もなく簡単にアクセスできてしまうのですが、それでも子供を有害な情報から遠ざけようとするシステムを堅持していることは一つの見識だと思います。そうした社会的背景があるからこそ、今回の事件でも、ネチズンの良識が残酷な動画の流布を食いとめようという行動の形で現れてくるのでしょう。
と、私がこんなことを書いているのは、日本で起きた小学６年生の同級生殺害事件が念頭にあるからなのですが。
６月16日（水）
（注：前日の続きです。６月15日の日記を先にお読み下さい。）
昨晩無理して飲んだ挙句ばったりベッドに倒れこみ、目覚めれば朝４時半。お酒を飲みすぎた翌朝はなぜか早起きしてしまいます。目覚ましは７時にセットしてあるので、もう一度寝なおそうとしたのですが、ダメ。諦めて５時半には起き出してしまいました。
眠気はないものの、頭は重いし、気分はすっきりしないし、見事に二日酔いです。冷たい水を飲みながら、韓国では二日酔いの時には何を飲んだり食べたりするんだっけ？とぼんやりした頭で考えます。思い出した。ヘジャンクック。そんなもの、今は全然食べたくないんですけど。
シャワーを浴びて、コーヒーを飲みながら、昨夜チェックできなかったメールの返事を書いたりしているうちにだんだん頭もはっきりしてきました。少し早いけどそろそろ出勤してしまおうかなと思っていた時、携帯が鳴りました。時刻は８時５分。こんな時間に一体何？
電話の向こうは韓国人男性。初めはよくある間違い電話と思ったのですが、いや待てよ、もしかして……と記憶を辿る内、先方から「もしかして昨日の日本人の先生ですか？」 電話の主は昨夜携帯の番号を教えてくれたＫ先生でした。自分の携帯に知らない番号からの着信履歴があったので、折り返しかけてみたということのようです。ってことは、昨夜の出来事はきれいに忘れてしまってたのでしょうか？ そんなぁ〜。頼りにしてるんですから、頼みますよ、Ｋセンセ〜。
６月15日（火）
１学期の最終週に入りました。ということで飲み会が続きます。今日はテニス同好会の先生方の親睦会食で、学校の近くの焼肉屋さんへ。定刻にちょっと遅れて着いてみると、20人ぐらいの先生方で盛り上がってます。ホンイルチョム（紅一点）の私は、席に着くや否や、ワイン、ビール、ブランデー、焼酎とチャンポンの大歓迎。気がつけば、目の前に大小４つのグラスが並んでます。壮観ですが大丈夫なんでしょうか。
テニスの練習にはいらっしゃらない先生や、定年退職なさったＯＢの方々までいらしていて、賑やかです。ＯＢのお一人は現在田舎で農業をしてお酒を作られているそうで、ワインはその先生の手作り。かなり甘口でアルコール14％の葡萄ジュースという感じですが、なかなかいけます。でも、これ、酒造法違反じゃないんでしょうか？ ブランデーはバランタインの30年物。もちろんどなたかの持込です。こんなお酒を私のグラスにたっぷり注いではもったいないんですけど……。
久しぶりに自分の酒量をはるかに超えて飲みました。体育会気質の私は、目上の人から勧められればとりあえず受けてしまうので、こういう席では大変なのです。と、こんな風に書くと凄い量を飲んでいるように見えますが、実際に飲んだのは、ワインをコップになみなみと１杯、ビールをコップ１杯半、焼酎は小さなグラスで１杯半、ブランデーは舐めただけ、です。これでも、私の許容量の３倍ぐらいになってるはずです。人からはよく「お酒強いでしょう？」「１升瓶かかえて嬉しそうに飲んでそう」などと言われるのですが、実際にはほとんど飲めません。体調が良い時で、ビールコップ１杯半が限度でしょうか。今日は相当無理をして、大量の水分を取って、アルコールを強制排出しながら飲み続けるという荒業で凌いだ２時間でした。
それでも、いろいろな先生方と話ができる席は楽しいもので、２時間の会食があっという間でした。そして２次会。飲みに行くのならもうこれ以上は無理なので失礼しようと思っていたのですが、行き先はすぐ近くのノレバン（直訳すると「歌の部屋」でカラオケのことです）と聞いて、のこのこついて行くことに。カラオケなら歌さえ歌えばコーラ飲んでてもＯＫなので気楽です。缶ビールのオーダーにサイダーを追加してもらいました。あれ？ そもそも韓国のカラオケでお酒を出すのは法律違反のはずなんですが……ケンチャナヨ？ 私は左手にサイダー、右手にマイク、歌うはパッカヨビの「オットンガヨ」。
韓国のノレバンのシステムは日本と同じです。ただ、面白いのは、部屋の真ん中にテーブルがないこと。壁に沿ってぐるっと配置されているソファと並んで、テーブルも壁際に置かれているのです。したがって、部屋の中央にはぽかっと大きな空間が空いています。
なぜそんな変な配置になっているかと言えば、韓国人は皆、歌に合わせて踊りたがるからです。ソファに腰掛けているのは疲れて休憩する人だけで、あとは、誰が歌っていようとどんな曲だろうと踊ります。ちなみに、参加者はほぼ全員私より年上のおじさんばかりです。でも、立ち上がってとにかく踊る。
結局１時間ほど歌って踊って、最後の曲は韓国を代表する民謡「アリラン」。地方によっていろいろなバリエーションがあるのですが、最も有名な京畿道のアリランです。なぜか、と言うよりむしろ当然と言うべきか、マイクを持たされたのは中国人の先生と日本人の私。もちろん韓国人の先生方も加わって全員の大合唱で２次会はお開きとなりました。そして３次会へ。
３次会はすぐ隣のホプ（ＨＯＦ）。ビールを飲ませるお店です。生ビールと乾きもののおつまみを前に、話に花が咲きます。でも、これだけ酔っていると、韓国語の聞き取り能力が落ちるので、話に付いて行くのも一苦労。話す方も酔っ払っていて、呂律が回らなくなってる方もいますし。そんな中で、同席しているＫ先生は大学の○○長をしているので、困ったことがあったらＫ先生に連絡するといいという話になり、早速Ｋ先生の携帯番号を教えてもらい、自分の携帯に登録しました。念のため一度かけてみればと言われ、発信するとちゃんとＫ先生の携帯に着信。めでたしめでたし。心強い味方ができて、有難いことです。
いつ果てるとも知れぬ３次会は途中退席することにして、11時半頃失礼しました。家に着くと何をする気力もなくそのまま就寝。飲んだ〜、頭痛い〜〜。
６月５日（土）
週末、所用で日本に帰りました。最近日本では韓国映画の公開が続いているので、この機会に「スキャンダル」と「シルミド」を日本語字幕付きで見てみることにしました。どちらも韓国ですでに見ている作品です。
「スキャンダル」はフランスの書簡体小説、ラクロの「危険な関係」が原作で、舞台を朝鮮時代に移した翻案物。この翻案がなかなかうまく嵌っていて、よく出来た映画です。前半はソフトポルノ風の展開ですが、後半がらっと趣が変わってからはしっかり感動させてくれます。特に、ベテラン女優イ・ミスクがいいですね〜。イ・ミスクは「鯨とり」「桑の葉」など韓国映画の名作に出演している80年代のトップスター。高貴な両班の妻として美貌と威厳とプライドを備えた役どころを見事に演じてます。仰々しく髪を結い化粧を施した朝鮮時代の美女の装いもさることながら、ラストで見せてくれる化粧っ気のない顔もとても魅力的でした。この映画、日本ではヨン様ことペ・ヨンジュン主演ということで話題になりますが、韓国では、ベテラン女優イ・ミスクと現在若手トップスターのチョン・ドヨンという二人の大先輩に挟まれて、映画初挑戦で思い切ったイメージチェンジに踏み切ったペ・ヨンジュンがどこまでやれるかお手並み拝見といった捉え方をされており、ペ・ヨンジュンもなかなかやるじゃない、と評価された作品です。ヨン様以外にも見所の多い映画ですので、ヨン様に興味のない人も、ぜひ一度見てみてください。
「シルミド」は東映が全国250館で封切という韓国映画としては最大規模の興行を仕掛けたおかげで、街中あちこちでポスターを見かけるは、試写会もやたらと行われてるは、テレビで番宣の特番はあるは、前宣伝がすごいですね。正直言って、これは日本人好みの作品ではないと思うのですが、韓国に興味がある人、韓国を知りたい人にはぜひ見て欲しい映画です。映画の内容だけでなく、こういう映画が韓国では大ヒットして1100万人が見たという事実まで、自分の眼で確かめて知って欲しいと思います。日本と韓国、日本人と韓国人がどれほど違うのか、考えさせられる作品です。個人的には、実質的な主役のソル・ギョング（この映画では「訓練兵31人全員が主役」と強調されているので単純に「主役」と言えないのです）をぜひ見て欲しい。一見地味な役者さんですけど、卓越した演技力の持ち主で、韓国で最も人気のある男優の一人です。ちなみに、韓国で現在最高の男優はソル・ギョング、ソン・ガンホ、チェ・ミンシクです。３人ともイケメンからは程遠いってのがすごいですね。また「シルミド」には、この３人とは別格、韓国映画の顔とも言うべきアン・ソンギも出演してます。こんな題材で、こんな俳優で、こんな映画を作って、大ヒットしてしまう韓国って一体？ 日本と全然違う国です。
６月３日（木）
日本へ向かう飛行機の中での出来事。隣の席は韓国人女性でした。年令は50歳ぐらい？ 日本人乗務員に流暢な英語で話しかける、お洒落でスマートなおば様です。私が日本人と知ってか、特に話しかけては来なかったのですが、食後にガムをくれました。お洒落でスマートでもやはり韓国人のおばさんは韓国人のおばさんです。そして、しばしの沈黙の後、窓の外を指差して、突然私に質問を投げかけてきました。
私が突然韓国語で答えたので、驚いた様子のおばさん。慌てて、「私は日本人ですが、韓国で仕事をしているので、韓国語を勉強しました」と付け加えました。
韓国語でおしゃべりできる相手を見つけて嬉しかったのか、おばさんはいろいろな話を始めました。オーストラリアに住んでいて、子供たちもそこで学校に行っていること、ご主人が日本にいるのでソウル経由でオーストラリアから日本へ行く途中であること、ご主人のリクエストでお土産の焼酎やおつまみを買い込んで来たが税関で申告する必要があるだろうか……等々。私も尋ねられるまま、韓国に来て４年ほどになること、ソウルの大学の日語日文学科で仕事をしていることを話しました。すると、おばさんは、
間違いありません。嶺南大で教え子だったパク君です。モー娘。の大ファンで、カラオケで「ＬＯＶＥマシーン」のサビ「日本の未来は(Wow×4) 世界がうやらむ(Yeah×4)」を熱唱する彼を見て、思わず私の方が「日帝36年の恨みはどうした？」と問い詰めたくなった、貴重なカルチャーショック体験をさせてくれたパク君です。こんなところで彼のおばさんと遭遇するとは。おばさんの方も「こんなことがあるとは……」「世間は狭い」と嬉しそうでした。
彼の今の連絡先は知らないと言うと、おばさんは連絡の取れる電話番号を教えてくれました。私が「○○君によろしく伝えてください」と携帯番号のメモを渡すと、「必ず連絡させるから。先生は大事にしなくちゃ」と。
そういうわけで、パク君、おばさんから連絡が行ったら、懐かしい？先生に電話ください。待ってますよん。
６月１日（火）
昨日今日と立て続けにこんな記事が出ました。
前者は食べるだけで運動したのと同じ効果を発揮する生薬成分の抽出に成功、今後商品化を目指すとのこと、後者は伝統的な漢方薬７種の組み合わせによって高脂肪の食事を取っても体重増加を抑制できるお酒を開発したというニュースです。面白そうですけど、本当に効果があるのでしょうか。ダイエット酒「ソソソ（少少笑）」は実際に開発会社のＨＰを通して販売しており、１本（容量不明）39000Ｗだそうです。う〜ん、本当に効果があるのでしょうか。